柳孝明's diary

柳孝明 ブログ

新作執筆で「生身の人間に興味」=村上春樹氏への公開インタビュー要旨

新作執筆で「生身の人間に興味」=村上春樹氏への公開インタビュー要旨

 作家の村上春樹氏が6日、京都市で「公開インタビュー」に応じた。村上氏が国内の公の場で語るのは、極めて異例。発言の主な内容は次の通り。

▼「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、主人公の成長物語。短い小説にするつもりだったが、主人公の友人だった4人のことをどうしても書きたくなった。今回は生身の人間に対する興味がすごく出てきて、登場人物のことを考えているうちに勝手に動きだした。3~4年前なら書けなかったかもしれない。

▼「ノルウェイの森」では純粋なリアリズムを書きたかった。文学的後退だと批判されたが、僕としては実験だった。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」では頭と意識が別々に動くという体験を初めてして、僕にとっては文学的試みだった。

▼物語に深みや奥行きを与えるのはすごく難しい。読者に感応してもらえれば、その周りの人に共鳴し、ネットワークができていく。「どうして僕が考えていることが分かるんですか」と読者に言われると、すごくうれしい。

▼10代から19世紀の小説を読みあさり、体に染み付いている。「戦争と平和」「カラマーゾフの兄弟」は何度も読んだ。

▼音楽が好きで、音楽を聴きながら仕事をしていて、音楽に励まされている。小説の書き方は誰にも習っていないが、ジャズのリズム感が染み付いているので、「演奏するみたいに書けばいいんだ」と思った。

▼小説を書き始めたころ、書きたいけれど書けないことがいっぱいあって、書けることを集めて書いていた。2000年ごろになって、書きたいことを書けるようになったと感じた。

▼僕自身、自分の作品を読み返して胸を打たれたり、涙を流したりすることはない。もっと引いて書いているが、(地下鉄サリン事件の遺族らにインタビューした)「アンダーグラウンド」だけは泣いてしまう。ある遺族に3時間ぐらいインタビューし、その帰りに1時間も泣いた。あの本を書いたのは僕にとって大きな体験で、(それが)小説を書く時によみがえってくる。

▼本を読んで「泣きました」と言われるより、「笑いが止まりませんでした」と言われる方がうれしい。ユーモアは人の心に広がる自然さ、自由さみたいなのがすごく好きで、文章を書くときはユーモアをちりばめていきたいと思う。

▼僕は一生懸命に書いている。小説を書くときは集中し、朝早く起きて、夜は早く寝る。手抜きをしないのが僕の誇りです。(2013/05/06-20:31)